終幕 「墓場」
ジュリエットが手にした短剣が、ロミオの胸を突き刺した。
ロミオは目を見開き、手を伸ばした。
力なく、震えた手は宙をかき、ロミオは「うっ」と呻いてその場にくずれ落ちた。
ジュリエットはその様子を信じられない思いで見つめていた。
「ロミオ……」
ささやくような声に答える者はもういない。
「ロミオ……」
もう一度呼んでみたけれど、結果は同じだった。
事切れている……。
「……ジュリエット!」
彼女を呼ぶロレンス神父の声が遠くから聞こえてきた。
でも、ジュリエットの耳には入らなかった。
ジュリエットはもう動かないロミオの身体をじっと見つめた。
「ロミオ……」
ジュリエットはそっと膝をついて、右手に短剣を持ったまま左手でそっと彼の頬に触った。
まだほんのり暖かさが残っている……。
「……こんな出会い方をしていなかったら、わたしたち憎み合わずにすんだのかしら?」
静かに語りかけるジュリエット。
でも、もうそれに答える声はない。
睨み付ける瞳もない。
拒絶する身体も……もうどこにもない。
ジュリエットの頬を涙が一滴流れ落ちた。
「ああ……ロミオ」
ジュリエットの手にした短剣が滑り落ち、地面にぶつかってカツンという音をたてた。
ジュリエットはロミオの手を両手でそっと持ち上げ、自分の頬にあてた。
「ああ、ロミオ。どうしてあなたは……ロミオなの?」
そのまま舞台はゆっくりと暗転していく。
最後のスポットライトが消えた時、体育館は嵐のような拍手でどよめいた。
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