(4)
「それで、何の用だったわけ?」
一通り謝り倒して(なぜか田中さんにも謝られた。「美砂がバカでごめん」とか、「美砂がアホでごめん」とか、「美砂の暴走を止められなくてごめん」とか、8割美砂のことを謝って、最後に勝手に美砂からアドレスを聞いたことまで謝られた。それは別に全然OKというか、むしろ嬉しかったのだけど)、俺たちは本題に入ることにした。
すでに時刻は8時半をまわっていた。
『あ、そうそう。神くん、部活やってなかったよね』
そう言えば、さっきもそんなことを言ってたな。
なんだろう。部活の有無を聞いてくる理由。
その1.部活の勧誘
これはないな。
田中さんが所属しているのはオーケストラ部。部員数150名を越す学内最大規模の部活動。二高と言えばオーケストラ部、オーケストラ部と言えば二高と言われるほどの知名度と実力で、予算も半端じゃなければ、放課後の教室利用などでも優遇されている。
バイオリンの経験者を探しているという話なら聞いたことがあるけど、バイオリンどころかリコーダーだってまともに演奏できないズブの素人の俺をわざわざ勧誘するほど人に困ってはいないはずだ。ならば、
その2.バイトの勧誘
これか。うん、多分これだな。
「何、バイト?俺でよければ力になるけど?」
俺は調子よく答えた。
さっきの美砂とのやりとりで、田中さんの中で、俺のイメージが激悪であることが判明しているのだ。少しでも印象をよくしておきたい。たとえ無駄なあがきだとしても。
『あ、ううん。バイトじゃないの』
バイトじゃない?
「あ、ボランティア?」
『……うーん、まあ、ある意味』
なんだか煮え切らない返事だ。
『あのね』
「うん」
『神くん、応援団をやる気ない?』
……応 援 団 ?
|