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《出演者による独り言という名のプロローグ》

3人目:高崎ものかの友人



友だちを選ぶ基準というものは、人それぞれいろいろあると思う。
私に限っては、とりあえず、

「ものかは美人でいいよね〜。美人は得でしょ〜?」

とかほざきやがる女とは死んでも友だちにはならないと心に決めている。

美人が得など、誰が決めた。
益がないとは言わない。ただし、同じくらい――時と場合によっては、それ以上害もあることを、ちょっとは考えて欲しいと思う。


「そうですよね。"美人"は褒め言葉とは限らないですよね。
努力して美人になった人にとっては称号なんでしょうけど、生まれつきの人間にとっては親の遺伝子でしかありませんからね。そんなこと褒められても」

そういうリリイは私とはタイプは違うがかなりの美少女。
おまけに、どこで身につけたのか、凄腕の世渡り上手。
あまり自分のことを話したがらない子だからよく分からないけど、多分昔ルックスのことで相当嫌な目にでもあってきたのだと思う。
目立たないことを常に最優先に考えて行動している節がある。
人並み外れた美貌の持ち主である私と仲良くすることで、自分の影を薄くさせようと考えるとは恐れ入る。わたしなんかでよければ、どうぞご自由に利用してやって下さい、という心境だ。
同じ苦労をしてきた、いわば同志。

「分かるなあ。わたしの従姉もすごい美人で、そのせいでかなり苦労したみたいだから。
理解されないってのが一番辛いみたいね。『なにそれ、自慢?』とか言われてムカツクって言ってた」

神妙そうにうなずくむっちゃんは、普通の子。
いや、世間一般的にはまあまあ可愛い方なのかもしれないけど、私の審美眼からすれば"平凡"その一言につきる。
普通だったら、むっちゃんみたいな子とは付き合わない。
こういう子は、口でどう言おうとも、心の中じゃ嫉みを感じているか、もしくは一方的に崇め奉ってるかのどちらかに決まっているから。
だけど、むっちゃんは違う。
顔は普通だけど、中身が普通じゃなかった。
初めはまったく興味がなかったのに、たまたま名簿の関係で席が近かったからしゃべってみたら、一気に気に入ってしまった。
実を言うと、自分から"友だちになりたい"と思ったのはむっちゃんがはじめてだった。


幼稚園から中学まで、友だちもどきはいても、親友は作らなかった私。
高校1年にしてはじめて、そう呼べそうな――いや、そう呼びたい友だちができた。
あとは彼氏ができれば文句はないのだけど……。

思い浮かべるのは、幼なじみのお調子者お馬鹿小猿。

「どんなにモテたって、肝心な一人にモテなきゃ意味ないじゃん……」

むなしく響く自分のつぶやきに、2人の親友が同情するようにうなずいた。


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