《出演者による独り言という名のプロローグ》
1人目:須藤広志の初恋
草食系男子なるものがもてはやされている今日この頃。
それならば、こんな僕でもわずかな望みくらいあるだろうか?
僕は16歳にして初めて”一目惚れ”というものを経験した。
相手は同じ高校の女の子。
恋した瞬間を”赤い実はじけた”なんて言い方をすることがあるらしいが、僕の場合は、時が止まった。
彼女はとても美しかった。
女の子にしては高めの身長。
凛としたたたずまい。
意志の強そうな大きな瞳。
ボーイッシュというよりは、中性的と表す方が適切だと思われる服装。
何から何まで、僕の目を惹いた。
”存在感”や”オーラ”とはこういうことをいうのか、と頭を殴られたような衝撃だった。
名前は知らない。
それどころか、クラスも知らない。
知っていることと言えば、僕と同じ1年生で、昼休みに必ずパンを買いに購買へ行くということだけ。
あとを尾行ればクラスくらいは知ることができるのだけど、そんなことすらおこがましいのでは、といちいち躊躇してしまう僕は、草食系というより、ただのヘタレだ。
それでも今日も、彼女を見つめるたった数分間の至福の時を味わうために、僕は購買へ向かう。
今日も彼女に会えますように……。
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