小説TOP 前 次



第一幕 「舞踏会」


語り
「昔々、ある国に、モンタギューとキャピュレットという貴族がおりました。
今からお話致しますのは、その両家の思惑に振り回されながらも、
恋をし、散っていった、二人の男女の、悲しい悲しい、愛の物語でございます」

舞台下手(幕は下りている)、乳母登場(スポットライト)

乳母
「ジュリエットさま。ジュリエットさま」

舞台上手、ジュリエットにスポットライト

ジュリエット
「なあに、ばあや」
乳母
「ああ、ジュリエットさま。まだそんな格好を。早くこのドレスに着替えてください。
もうすぐ舞踏会が始まってしまいます」
ジュリエット
「……ああ、煩わしい。ねえ、どうしても行かなくてはダメ?」
乳母
「当然でございます。いつまでも子どものように駄々をこねないで下さいませ。
 まったく、もうすぐ14歳になるというのに、いつまでもそのようでは困ります。
 今日は婚約者殿もお出でなのですから。いいですか、今すぐ着替えて下さいよ」

乳母上手側へ退場

ジュリエット
「はあ。最近、誰に会っても、会ったこともない婚約者のことばかり……。
 その方がわたくしの運命の人とは限らないのに。
 わたくしはその方を愛せるかしら?」

ジュリエットのスポットライト消灯
舞台下手、マキューシオとロミオにスポットライト

マキューシオ
「おいロミオ、聞いたぞ!
今夜、キャピュレット家で舞踏会るあるんだってな。俺も連れて行ってくれよ」
ロミオ
「一緒にと言わずに、どうせなら僕の代わりに君が参加してくれよ」
マキューシオ
「何を言ってるんだ!今日は婚約者の姫君とようやく対面できるんだろ?」
ロミオ
「婚約者なんて……親が勝手に決めただけだ」
マキューシオ
「なんだよ、お前、見かけによらずロマンチストなんだな。
 いいじゃないか。お前の婚約者はとびきり可愛らしい方らしいじゃないか」
ロミオ
「興味ない」
マキューシオ
「やれやれ。そうはいっても会ってみればきっと好きになるさ」
ロミオ
「……」
マキューシオ
「とにかく、俺も一緒に行かせてもらうからな」

マキューシオ下手へ退場

ロミオ
「会えば好きになる……なれるだろうか。あの人を忘れて、別の人をなんて……」

スポットライト消灯
舞踏会の音楽
舞台中央にスポットライト

キャピュレット
「皆様。本日は我が家の舞踏会にお越し下さいましてありがとうございます。
 精一杯のおもてなしを心がけますので、どうか皆様ごゆっくりとお楽しみ下さい」

開幕、舞台照明。



小説TOP 前 次